資本主義の基本的事柄

第16講 H-9

 前々回までのことを振り返ろう。資本主義の対義語は社会主義であるとする現在の考え方を一転させ、社会主義の対義語を個人主義と捉え、資本主義の対義語を共産主義だとして一応の断定をした。

 現在、多くの国家は資本主義国家である。つまり、資本を機関投資家個人投資家などの投資家、資本家、さらに資産家が保有し、それを使うことによって、人々の労働力を買い、労働力によって生み出された商品(物質、非物質、サービスも含む)を売ることによって利益を上げ、その利益を資本家などと労働者で配分するシステムである。すでにこの社会システムのなかで生活をしている人々にとっては、この基本的な仕組みは当たり前のこととして、当然のこととして、もはや日ごろ考えることがないほどに普通なのである。しかし、普通に対して疑問を持たなければ進歩はない。

 資本主義の欠陥については以前から幾つも挙げられている。例えば、労働者に対する労働力の搾取、際限なく成長することを前提としていること、そして一番の問題点は、格差がいつまでも広がっていくことである。この点についても、もはや改めて指摘するまでもないだろう。肌感覚というよりも日常生活の中でひしひしと感じていることである。加えて、さらに厄介なことは、資本は世襲されることである。以前にも指摘したことだが、資産や不動産などの資本は、そのほとんどは相続されるのである。「資本の世襲」はいつまでも格差が広がる主要因といえる。