既知の言葉の未知の意味

第2講 C-2

 前回の続きである。「言葉を知る」具体的方法の2つ目は、「既知の言葉の新しい意味を知ったとき」である。例として「都合」を挙げる。この言葉の意味を調べると、物事に影響を及ぼす事情、具合の良し悪し、やりくりすること、と記されている。これらの意味は、日本語を用いる多くの人々が理解しているだろう。しかし、「都合」には「すべて合わせて。合計。」という意味もある。例えば「都合10人が集まる」と言えば、「都合」は影響や具合のことではなく、「全員で」との解釈がなされるのだ。

 少々脱線する。そもそも「都」には「全て」という意味がある。この字と「合」で熟語をつくり「都合」とすれば、「合」の意味も含めて、「合計」の意になることは当然と言えよう。

 本題に戻る。もし今まで「都合」という言葉を知りつつ、この言葉に「合計」の意味があると知らなければ、つまり、既知の言葉に未知の意味があったならば、その人間にとって、この、未知の意味を知った状況は、「既知の言葉の新しい意味を知ったとき」となる。これが、「言葉を知る」具体的方法の2つ目である。

 

 先週の記事について一点、訂正する。ここに「読者が一人でもいるならば、必ず書き続ける」と記したが、これは誤りだ。読者の有無を問わず、書き続ける。一方で、リアクションをしてくださっている『底辺人間記録 底辺人間の行き場のない思考の肥溜め』の執筆者に、感謝申し上げる。